人の小過(しょうか)を責めず、
人の陰私(いんし)を発(あば)かず、
人の旧悪を念(おも)わず、
三者もって徳を養うべく、
またもって害に遠ざかるべし
(「菜根譚(さいこんたん)」洪自誠(こうじせい))
作者の洪自誠とは、16世紀後半から17世紀前半ごろ明の時代の知識人で優秀な官僚であったと考えられています。「菜根譚(さいこんたん)」では、醜い戦争に巻き込まれる中で人間を観察して生まれた処世訓が書かれています。
「菜根譚」というのは、「硬い野菜の根も苦にせずに良く噛めば(苦しい境遇に耐え忍べば)あらゆることは成し遂げられる」という古事に由来します。また、菜根が粗末な食事を象徴する言葉なので、貧しさをいとわない貧困の暮らしを良いものとする意味も含まれています。
「菜根譚」は儒教の経典からの引用が多く、道教や仏教の思想も取り入れているというのが特徴です
今回はその中のひとつをとりあげてみました。
◆小過(しょうか)を責めず
人の小さな過失は咎めない、いちいち小さなことに目くじらを立てていては、人は集まってきません
◆人の陰私(いんし)を発(あば)かず
人の隠し事はあばかない。誰にも人には触れて欲しくないことがあります。もしも気が付いても、そっとしておきましょう。
◆人の旧悪を念(おも)わず
昔、人からされた嫌なことや、失敗は忘れてしまいましょう。いつまでも執念深くほじくり出したのでは、人間関係は破綻します。
◆三者もって徳を養うべく、またもって害に遠ざかるべし
この3つのことを心掛けていれば、自分の人格を高めることができ、人から嫌われ、恨まれることもありません。
人間関係を円滑にしていくには思いやりが必要であり、言わなくても良いことは言わないことが、恨みを買わないで済む方法で、相手からも口が固いと信頼されるでしょうし、自分自身の徳を高めることになります。