第一話 集客への取り組み
社長:一度決めたら諦めないでやり抜く
山中:いけいけどんどん飛び込み営業もへっちゃらのベテラン営業マン
佐藤:与えられたことは確実にこなす
小林:お客様を大切にしてつなぐのがうまい。
石川:考えながらいろいろと試すタイプ
ストーリー
幸せ家族株式会社は住宅販売会社である。ここ数年売上は右肩下がりと低迷を続けている。
この局面を何とか打開したい社長は、考えを巡らせた結果、集客の仕組みを作ることを決断。個人に任せるのではなく、組織としてお客様を獲得できるように試行錯誤しながら、取り組んでいく。
※この物語は架空のもので実在するものではありません。
〇月×日
今日は、住宅完成会、事前に用意した新聞折込も入っているし、今日は何組の来場があるのか、社員一同、朝からワクワクしながら時間を待っている。
社長:「今日は何組くらい来るかな?」
山中「10万枚もチラシを入れたんですから、10組以上は来るんじゃないですか。」
石川「前回は5万枚のチラシを入れて2組でしたから…」
社長「そうだな。5組来ればよしとするか。」
チラシ代に50万円ほどかかっているので、5組なら1組集めるのに10万円もかかることになる。1件でも成約できればいいが、できなかったときは、チラシ代だけではなく、人件費も捨ててしまうことになる。
午前10時のオープン直後に1組の来場があった。子供を2人連れた夫婦だ。初めて家を見たらしく、これからいろんな家を見て2年後には家を建てたいということだった。
社長「今すぐ、検討しているわけじゃないんだな。」
小林「そうですね。イベントがあるときには案内を出して来場してもらうようにしなければいけませんね。
石川「完成見学会の案内だけではなく、月1回は電話を入れて話を聞くようにした方がいいよな」
小林「そうですね。完成見学会の案内だけでは、期間が開く場合がありますからね。」
その後は、客足が止まり営業マンは退屈していた。
山中「一昔前は、5万枚もチラシを入れたら20組以上は来場したのにな。」
佐藤「今は、昔とは違って警戒心が強くなり、簡単にお客様は来てくれないですよ。」
午後2時、2組目の来場があった。近くに住むご主人が一人で見に来られた。
山中「お一人ですか。」
お客「そうなんです。妻がどんな家なのか見てきて欲しいというものでね。」
山中「早急に家が必要というわけではないですよね。」
お客「上も子供が来年の4月から、小学6年でね。そろそろ自分の部屋も欲しいらしいし、妻もキッチンが手狭というので、散歩ついでに見に来たのです。」
山中「それじゃあ、半年後には工事にかからないと4月に間に合いませんね。打ち合わせの時間も考えると2ヶ月以内には、建築会社を決めなければ間に合いませんよ。」
お客「そうなんです。今、2社の候補があります。もう1社見てから決めようかなと思って」
山中「そうですか。では、ゆっくりと見てください。疑問がありましたら尋ねてください。」
今すぐのお客様ですので、できれば成約に持っていきたい。しかし、他社との話を聞いていると、これといって決め手がない。どのようにアプローチするのかは、後程、みんなで話さなければならない。
その後は、期待していたにもかかわらず、来場者はなかった。
完成見学会終了後の会議
社長「今日の来場は2組か。これでは広告費倒れになってしまう。集客できるうまい方法はないものか。」
石川「折込にだけ頼っているからではないでしょうか。他に告知の方法があるはずです。」
佐藤「そうですね。新聞販売部数が減っていると聞きます。特に、初めて住宅を購入する層になると、新聞購読率は30%もないとも言われています。」
社長「そうなると、10万枚でも3万人しか見ていないということか。」
佐藤「そうなります。3万枚で2組ならうなずける数字ですよね。」
社長「新聞折込は止めて、ポスティングに切り替えるか。それも賃貸住宅に絞って」
山中「そうなると、事前に現場付近の賃貸住宅を調べなければいけませんね。」
小林「ポスティングするのは、どうしますか。」
社長「当面は、社員で手分けして配布するのがいいと思う。」
山中「そうですね。やったことが無いのですから、チャレンジして計測したいですね。」
社長「じゃ、次回からポスティングにする。事前に近隣の賃貸住宅を調べておくように。」
1ヶ月後、再び完成現場の見学会が開催された。事前にポスティングした数は、3万枚。しかし、賃貸住宅居住者だけプローチしているので、集客数に期待が持てる。
山中「今回は、準備周到だから来場者も増えるだろう」
佐藤「そうですよね。私も期待大ですよ。」
社長「みんな期待しているだろう。一番期待しているのは他ならぬ私だ。」
ところが、午前中に来場者はなく午後から3組の来場があった。賃貸住宅に絞ってポスティングしたにもかかわらず、来場者は少なかった。こんなことが続けば会社の存続も危うくある。
社長「集客の方法はないだろうか。チラシだけでは集客できないことがわかった。いろんな ものを組み合わせないと集客は難しい。」
佐藤「看板を設置する、地域の情報誌に広告を掲載するのはどうでしょうか。」
社長「他にないか」
小林「ホームページを充実させましょう」
社長「ホームページか。数年前に作ったきりだな。」
小林「30~40代は、新聞は読まない代わりに、ネット検索は必須です。自分たちに必要な情報はすべてネットで調べますから、家も同じじゃないでしょうか。」
社長「そうだな。会社案内的なホームページじゃなくて、物件や近隣の情報を盛り込んだものにする必要があるな。佐藤さん、ホームページ担当をお願いするよ。」
佐藤「わかりました。全体の構想ができたら報告します。それから、皆さんの意見を聞かせてください。」
石川「DMも使いましょう。今まで来場していただいたお客様に、次の完成見学会の案内も出したり出さなかったりしていたので、システム的に出すようにすれば、いいと思います。」
小林「見込み客やOB客へのアプローチにニュースレターもありますよ。これを使っていろんな情報を提供していけば信頼度もアップするんじゃないでしょうか。」
社長「それも試してみよう。なんとかして現状を打開しないとな。」
こうして、集客の手段として、ポスティング、DM、看板、情報誌、ホームページを使うことになり、それぞれに担当が割り当てられた。