山のあなたの空遠く 「幸(さいわい)」住むと人のいふ 噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、涙さしぐみ、かへりきぬ。山のあなたになほ遠く「幸」住むと人のいふ カアル・ブッセ
直訳すれば、
山のずっと彼方に
「幸せの理想郷」があるといわれています。
なので、私は人と尋ねていきましたが、
見つからず、涙ぐんで帰ってきました。
でも、あの山のもっとずっと彼方には
「幸せの理想郷」があると人々は言うのです。
という意味です。
若いころから遠くにある「幸」を求めては、挫折して落ち込み、また求めては、さらに挫折して落ち込んで、何度も涙を流しし、結局「幸」というものは決して遠くにあるものではないことにようやく気が付く。しかし、それでもなお遠くに「幸」を求め続けるという内容です。
自分の喜びや満足だけに時間を費やしていると、どこまで行っても満足するという状況には行き着きません。それはややもすれば不幸や悲しみを呼び寄せる要因になります。
でも、家族や縁のあった人たちの幸せを願ったり、困っている人たちのために尽くしたりという気持ちを変えると、自分がしなければならない大きな世界が見えてきます。しかし、その世界はどこまで行ってもこれで良いというものではありません。
つまり、私たちの人生体験の全ては、生きていくための準備だと発想を180度転換してみることです。そうするとこの世界で出会っている人たちを愛おしく感じ、遭遇する出来事に無限の価値を感じるようになります。
日々に目にすること、感じること、とても些細なことでも、心から楽しめるように自分の心を育むことが幸福に繋がっていく一歩なのです。
人生は長くはありません。人間は、いつかは必ず死を迎えます。一生の中で様々な壁にぶつかりながら、苦しみもがきながらも、心の中にある「幸」に深く憧れを抱き、真っすぐに歩いていくことが、理想の人生なのではないでしょうか。
人生を照らす言葉 国際コミュオン学会名誉会長 鈴木秀子著より